ダンス物語⑯新たな旅立ち!東京のダンスホールでスカウトされる!

私は、神戸の街のインフラが整うまで

いろんな仕事をしました

今までは、香水が漂う教室の中で

ドレスアップした女性相手にダンスをしていたのが

荒々しい言葉が交錯する男たちの中で

汗をかきながら仕事をしているのです

神戸も少しずつ復興していき

町も正常化していきました

私も精神的な苦しみが癒されたので

ダンスをすることを考えるようになりました

しかし、時がたちすぎたため大阪の生徒さんたちとは

疎遠になってしまい、教室に戻る理由がなくなってしまいました

「仕方がない!」「ああ、無常!」

何日か呆然としていました

そして新たな旅立ちを決断しました

それは、東京でダンスを踊ることです

いくつかのダンス教室をピックアップして

新宿行きの夜行バスに乗って東京に行きました

朝6時頃ついたので喫茶店でモーニングを頼み

お昼過ぎまであちらこちらと歩いて回りました

そしてお目当ての教室に行きましたが

お休みでした <ショック>

その時、思い浮かんだのが新宿にダンスホールがあるので

どんな雰囲気か見に行ってみようと思い

夜7時頃、踊りに行きました

受付に黒服の方が立っていて

そこでお支払いをして中に入りました

大勢の方が踊っていました

ソファーに座ってしばらく眺めていました

「やはり東京、レベルが高いなー」と

私は思いました

踊り方が洗練されています

そうしていると向こうから

ローマの休日の王女様のような

女性の方が近づいてこられて

「踊ってくださらない」とおっしゃられました

「はい」と返事をしてワルツを踊りました

とてもいい香水の香りがしました

ドレスも宝石もかなり高価なものをつけられていて

「この方は、ただものじゃないな!」と思いました

私のリードに従順についてこられて

とても感じのいい踊り方をされる方だなと思いました

踊り終わって、私は、「お上手ですね」と言いました

すると彼女は、「あなたこそ」と言ってくれました

そして「入ってこられた時からずっと見てました」

「あなた様はプロでしょ!わかっているんだから」と言われ

私は、「参りました」と答えました

そうして、彼女のお友達とか他の奥様とか

いろんな方とご縁ができてしまって

雇われダンサーのようになっていました

これはまずいぞ!そろそろ帰らねば!と思い

一区切りがついたところで

「今夜は楽しかったです。そろそろお暇します」と言いますと

「あら、もう少しよろしいじゃないですか」

「この後、お寿司屋さんに行きましょ」

「ねえ、先生」とおっしゃられました

私は、いつの間にか先生になっているぞと思い

東京に来た目的があるので今夜は退散しました

帰る時、支配人らしき方が

「どちらの先生ですか?」と言われ

「神戸から来ました」と言いました

すると突然「うちに来てもらえませんか?」と

言われて、わたしは「ちょっと今は?」と

曖昧な返事をしました

「いつでもご連絡ください」と名刺を渡され

「わかりました」と答えてダンスホールを後にしました

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ダンス物語⑮1日も早く復帰したいが、精神的に踊れなくなる!神戸の復興がまず第一!

私の住宅は、半壊状態になり

避難所で生活することになりました

毎日、冷たい弁当ばかりを食べていて

「あったかいものが食べたいなー」と

思っていました

何週間か経ち 避難所で昼寝をしていると

何回も何回も私を呼ぶ声が聞こえるではないですか

ふと見ると、私の生徒のYさんです

「先生、大変でしたね!」

「これ、必要なものが入っています」と

大きな段ボール箱を渡してくれました

その後も10人ぐらい生徒さんが来てくれました

美人先生2人も来てくれました

その頃大阪と神戸は、道路と鉄道が寸断されていて

大阪から新神戸経由で皆さん来てくれたみたいです

私は、「周りの人に恵まれているなー」

「ここまでこれたのは、みなさんのおかげ」

「早く復帰しなければ」と思いました

何日か経ち、ダンスのことばかり考えていましたが

「早く復帰しなければ!」と思うと

地震発生から今までの出来事が走馬灯のように蘇り

精神的に踊れない状態になっていました

もしかして私は、ダンスより神戸復興を考えているのでは

何日間か自問しました

その結果、心の中で「離れてはいけない!」

「少しでも復興のために何かしなければ!」

と思い、意を決して川崎重工の兵庫工場で

電車を作る仕事に就きました

心の中では「生徒のみなさん、すぐに復帰できなくて、すみません!」と

思っていました

その後、何年間、転職を繰り返し

復興にかかわる仕事をしていました

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ダンス物語⑭突然思いがけない天災に!1995年に起きた阪神淡路大震災で被災する!

私は、多くの生徒さんを育て

発表会に出演させていました

<基本をしっかり教え込めば、後は

ほっといても上達していきます>

そのような論理に、かなり自信がありました

そんな中、1995年1月16日の夜

ペットのインコが、かごの中でバタバタと

音を立て、なかなか眠らないのです

「どうしたんだろう?」と思いつつ

私は、寝てしまいました

部屋の中は去年のクリスマスパーティーで

頂いたお花でいっぱいです

何時間か経つと、その時です

ゴーーーーーーー

キキキキキキーーー

凄い横揺れでベットは右左と動いています

怖くなって布団をかぶりました

部屋の中の物が落ちたり跳ねたりして

大きな音を立てています

私の布団にもぶつかってきます

最後に大きな縦揺れで体は宙に浮き

ドーンと落下しました

暫くすると揺れが,しずまりました

私は放心状態です

少し気持ちが落ち着いてきてから

恐る恐る窓から外を見ると、土煙が上がり

ポートライナーの橋が崩壊し

斜め向かいのビルが倒れて、道路をふさいでいました

「これは大変だ!」と動揺しました

そうしていると、あちらこちらから

「助けてー」「助けてくれー」と声がしてきました

私は、本能的に「助けなければ!」と思い

無茶苦茶になった部屋を飛び出しました

外は空爆を受けたような状態です

また、「助けてくれー」と声が

見ると1階がペチャンコになっている窓から

おじいさんが手を出していました

私は無我夢中で走っていき引っ張り出しました

おじいさんは、私の手を握り

「ありがとう ありがとう」と言ってくれました

「他にも誰かを助けなければ!」と思い

近辺を走り回りました

‐‐‐—–-次回続くーーーーーー

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